気に入った物件が見つかったら契約しよう!不動産物件の売買契約時に絶対に注意しておきたいこと【その2】




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気に入った物件が見つかったら契約しよう!不動産物件の売買契約時に絶対に注意しておきたいこと【その2】

買付(購入)の申込み(不動買付証明書)

「不動産買付証明書」を出すときのチェックポイント

 ここまでで物件に問題がなければ、いよいよ購入の申し込みをします。通常は「あなたが署名押印した”買付証明書”が不動産会社経由で売主に届いた段階で、申し込みを入れた」という扱いになります。

 

「購入希望額」の決め方

 買付証明書には購入希望価格と物件名を書きますが、購入希望価格が売り出し価格よりも低い場合は売買が成立しないこともあります。

 あたりまえのことですが、不動産の価格は需要と供給の関係で決まるので、購入希望者が多いときはなかなか指値が通りにくくなり、反対に売りたい人のほうが多いときは指値が通りやすくなります。

 

 指値をするときは、いくらで指値をするのが適当なのか?とても迷います。ほかの投資家からも買付証明が出たときのことを考慮する必要があります。「その物件がどうしても欲しい場合」「指値が通ったら買ってもいいかなくらいに思っている場合」とでは、指値金額が変わってきます。

 どうしてもこの物件が欲しい場合は、指値の額はできるかぎり売り出し価格に近い金額にすべきです。

 「売り出したばかりの物件なのか、ずっと売れずに残っている物件なのか」、また「過去に値下げしたことがあるかどうか」によっても指値が通るかどうか、指値の幅が変わってきます。仲介不動産会社の担当者に、それとなく確認するのが良いでしょう。

 「指値は1割以内の金額」で考えるのが妥当です。1割以上になると売り出し金額と指値額との差が大きすぎて、売主も仲介業者も相手にしてくれないケースが多くなります。

 

「不動産買付証明書」を出しても”キャンセル料”はかからない

 ちないに買付証明書には、キャンセルしても金銭的なペナルティは発生しません。したがって、何となく雰囲気で買付証明書を書いて売主に渡したけれど、その後よく考えたらキャンセルしたくなたという場合でもキャンセル料はかかりません。

 でも不動産会社の心証が悪くなり、その後良い物件を紹介してくれなくなる可能性もあるので、できるだけ安易に買付証明書を出すのはやめましょう。

 

現金があるなら”現金購入”を最大限アピールする!

 また、人気のある物件はすぐに1番手、2番手、多いときでは6番手ぐらいまで購入希望者がつくことがあります。したがって、買付を入れたからといっても必ず買えるとは限りません。

 良い不動産物件はほかの投資家も狙っているという事を忘れずに、迅速かつ適正な対応が重要です。また3番手の場合でも、1、2番手の購入者がキャンセルをしたり、ローンがつかなかったりして結果として買えることもあるので、諦めないことも大切です。

 不動産業者はローンが使えなくてキャンセルになるのを嫌がり、現金購入する顧客を第一優先にする場合があります。そういう意味でも現金購入は大きな力を持っているので、「現金で購入する場合には”現金で買います”ということをアピール」すべきです。

 ちなみに買付証明書は、不動産業者にお願いするともらえます。

 

■不動産買付証明書のサンプル

(650×)不動産買付証明書のサンプル

 

「ローン」を組む場合の買付証明書の”注意点”

 ここではローンを組む場合の買付証明書の注意点を説明します。不動産買付証明書にはいろいろなひな形がありますが、ローンを組む場合には「ローンの金額」「ローン特約」の有無を見ておきましょう。

 

「ローン特約」があれば、万が一ローンが降りないときは無条件で契約解除できる

 あなたが金融機関からお金を借りることを前提に売買契約を締結し、融資の全部または一部について承認が得られなかった場合は、その売買契約を無条件で解除することができる仕組みです。この場合、手付解除や契約違反などの解除の適用はされず、支払済みの手付金は買主に変換されます。

 「ローン特約」をつけないと支払った手付金を放棄して契約解除するか、または損害賠償金や違約金を請求されることになってしまいます。そうならないためにも、「買付の段階で、ローン特約の”有”に丸をつける」必要があります。逆にいうと、だから売主や仲介業者は現金で購入する人を優先したくなるのです。

 なお「事前審査」の段階で銀行から「融資をします」という承諾をもらっていても、正式な融資承認ではないので、「やっぱり融資はできない」ということもあります。ローンを組む場合には事前に銀行から融資の承諾をもらっていても、必ず「ローン特約:有」に丸を付けるようにしてください。

 

前もって”自分はどのくらいの金利でどのくらいの融資を受けられるのか”を確認しておく!

 ローンを組む場合は、できれば不動産買付証明書を出す前に、ある程度の金融機関にあたって「自分はどのくらいの金利でどのくらいの額の融資を受けられるのか」確認しておくようにします。

 金利はお金を融資してくれる金融機関とあなたの年齢、職業、購入する不動産によって変わってきます。試しにローンの申し込みをしてみるといろいろなことがわかるので、ぜひ挑戦してみてください。

 ただし何度も繰り返し言います。「融資を不動産投資の最重要ポイントに挙げている情報もありますが、初心者が投資物件をはじめて購入する場合はあくまでも現金購入が基本」です。

 

 

売買契約の準備

売買契約時に必要なもの

 不動産買付証明書を書いて、その後もろもろの条件が無事にクリアされ、いざ契約となったら、売買契約までに次の5点を用意しておきます。

 

①印鑑(ローンを利用する場合は実印)

②印紙代(売買金額によって異なる)

③手付金(現金か預金小切手か事前に確認)

④仲介手数料の半額分の現金(半金)

⑤運転免許証など(本人と確認できるもの)

 

 もし売買契約の締結に本人が出席できない場合は、「本人の委任状」「印鑑証明書」が必要になります。ローンを利用する場合は、別途「ローン申込の種類」なども必要となります。

 

売買契約書に貼付する「印紙代」について

 売買契約書に貼付する印紙代は、購入する不動産の金額によって変わります。印紙は原則として売主、買主それぞれが契約書に貼付しますが、売主または買主いずれかの契約書がコピーの場合もあり、その場合の「印紙代は通常、売主と買主で折半」となります。

 印紙代は下図のとおりで、平成30年3月31日までは軽減税率が適用されます。

 

■不動産売買契約書の印紙代

(650×)不動産売買契約書の印紙代

 

手付金は「売買代金の10%程度」が目安

 手付金の金額については特に決まりがあるわけではありませんが、「売買代金の10%程度」が多いようです。手付金はトラブルが多いので、注意が必要です。

 手付金には次の3つがあります。

 

①証約手付

②解約手付

③違約手付

 

手付金を”放棄”して契約を解除するのは、契約をやめる最後の手段!

 特に定めがない場合、「手付といったら解約手付」となります。解約手付は、相手方が履行に着手するまでは、買主はすでに支払った手付金を放棄する(返還を求めない)ことで、また売主はすでに受け取った手付金の倍額を買主に返すことで、「売買契約を解除することができる手付」のことです。

 売買契約書の「手付解除」の欄が「全文抹消」(空欄)となっていた契約書がありました。この場合には、手付金を放棄して契約を解除することができない契約になっていたのです。「手付金を放棄して契約を解除することは、契約をやめる最後の手段なので、この部分はしっかりチェックする」必要があります。

 証約手付は契約が成立したという証拠として支払う手付のことです。契約は文書によらず口頭だけでも成立し、どの段階で契約が成立したのかがわからない場合もあるため、契約の成立を証明するために交付される手付のことです。手付金の領収書が契約の成立の証拠となる場合があります。

 違約手付は、契約の当事者に契約違反があった場合、損害賠償とは別に違約の「罰」として没収することができる手付のことです。

 手付には3種類がありますが通常は解約手付のことを指すので、証約手付、違約手付に関してはそういう手付もあるんだなくらいに思っていれば大丈夫です。

 

「仲介手数料」を支払うタイミングは?

 仲介手数料については、「残金決済時に一括で支払うケース」「契約のときに半金を支払い、残りを残金支払いのときに支払うケース」があります。売買の仲介手数料は、前項でも説明したように購入代金の「3%+6万円」(別途消費税がかかります)となります。

 仲介手数料は物件を紹介してくれた不動産会社に支払うものです。したがって売主から直に買った場合は、仲介する不動産会社が介在しないので仲介手数料はかかりません。しかも、不動産会社が通常は契約書を作成してくれるので、買主は契約書をチェックするだけで足ります。

 

 これに対し、売主が個人の場合には自分たちで契約書を作成しなくてはなりません。例えば、購入後、水漏れが起きた場合、「売主に損害賠償を請求できるか?」揉めることがあります。

 こういった問題を未然に防げるように契約書の中で、「不動産の瑕疵担保責任」など大切な事項を決めておくべきなのですが、素人が作成するのは少し荷が重すぎます。不動産会社が介在しないと仲介手数料を支払わなくて済みますが、それよりも大きな揉め事が生じ多額の弁護士費用がかかる事にもなりかねません。

 個人間で売買を行うときは、契約を不動産会社に代行してもらうというのも、後々揉め事を生じさせないためのひとつの方法です。「不動産会社に契約を代行してもらう際の費用は、購入代金の1~2%程度」が多いようです。

 

 

“契約”までにチェックしておくべき書類

 契約までに次の4つの書類を仲介不動産会社から送ってもらい、自分でチェックする必要があります。もし自分でチェックするスキルがない、時間がないという場合には、契約書のチェックを代行してくれる会社もあるので活用するようにしましょう。

 

①不動産売買契約書

②重要事項説明書

③購入マンションの管理規約、使用細則

④登記簿謄本(全部事項証明書)のチェック

 

契約までにチェックしておくべき書類①:不動産売買契約書

 売買契約書で特に注意すべき項目は、次の2つです。

 

①瑕疵担保責任

②契約の解除

 

瑕疵担保責任

 まず、不動産売買において瑕疵とは、「不動産に何らかの欠陥がある」という意味になります。

 「瑕疵担保責任は、購入する不動産物件に隠れた瑕疵がある場合、売主が買主に対してその責任を負うこと」を言います。買主が知り得なかった「瑕疵」を法的には「隠れた瑕疵」と言います。

 隠れた瑕疵があった場合は、買主は売主に対して損害賠償の請求をすることができます。また、瑕疵のために契約をした目的を達することができないときは、買主は契約の解除をすることができます。

 なお契約解除や損害賠償の請求ができるのは、買主が契約の際に瑕疵の存在を知らなかった場合で、知らなかったことについて買主に落ち度がない場合です。「構造部分の欠陥や建物の雨漏りなどが瑕疵に該当」します。

 契約書にはもちろんこの瑕疵担保責任について書かれていますが、ここで注意しなくてはいけないことは、「売主がどれくらいの期間瑕疵担保責任を負ってくれるか」ということです。契約書に書かれている内容は、主に次の3つのいずれかになります。1番多いケースが③になります。

 

①不動産会社が売主の場合は、2年以上瑕疵担保責任を負う事が義務付けられています

②契約書に期間の定めがない場合は、買主が隠れた瑕疵を知ってから1年以内は売主の瑕疵担保責任を追求できます

③契約書の中で期間が定められている場合、この期間が長ければ長いほど買主にとっては有利です

 

■中古のワンルームマンションの場合の”注意点”

 中古のワンルームマンションの場合、瑕疵担保責任を免責してほしいと要望される場合があります。瑕疵担保責任を免責する代わりに値段交渉をするケースもあります。ただし不動産投資初心者の人は、不動産コンサルタントなどがついている場合を除いては、「原則、瑕疵担保責任をしっかりとつけて契約する」ようにしましょう。

 

■不動産売買契約書のサンプル

(650×)不動産売買契約書のサンプル

 

契約の解除

 相手方が契約の履行に着手していて手付解除ができないときであっても、相手方が契約に違反した場合には、催告のうえ契約を解除することができます。

 この場合相手方に対して損害賠償の請求ができますが、一般的に損害賠償については、違約金に関する取り決めがなされていることが多く、その額は不動産物件価格の20%程度で、手付金よりも高いのが普通です(手付金の額は一般に売買代金の10%程度)。

 「契約に違反した場合」の例としては、相手方が契約書どおりに物件を引き渡さない場合があり、期日を指定して催促してもなお応じてもらえないときには契約を解除して、損害賠償を請求することができます。

 

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契約までにチェックしておくべき書類②:重要事項説明書

 重要事項説明書は、宅地・建物の売買契約を行う場合、宅地建物取引士が不動産物件と取引について説明しなければならない重要事項が記載されたものです。重要事項の説明の項目のうち大切な事項は次の7つです。

 

①登記された権利の種類・内容

②法令上の制限

③敷地と道路との関係、私道負担の有無

④飲用水・ガス・電気の供給施設および排水施設の整備状況

⑤1棟の建物またはその敷地の管理、使用に関する事項(区分所有マンションの場合)

⑥代金、交換差金以外に売主、買主で授受される金銭

⑦契約の解除に関する事項

 

登記された権利の種類・内容

 ここには登記された権利の種類と内容が記載されています。チェック項目は下記の2つになります。

 

■登記された権利の種類と内容

 ・契約者と登記簿の所有者が同一かどうか・・・不動産が共有の場合は、共有者全員と契約しなければ所有権を取得できません

 ・乙区の欄・・・抵当権が設定されている場合はここに記載されています。返済額の資料と照らし合わせてオーバーローンになっていないかどうか、もしなっている場合は残金決済のときに抵当権の抹消が確実に行われるかどうかを確認します。

 

法令上の制限

 法令上の制限というのは都市計画法や建築基準法、そのほかの法令に基づく権利の制限のことです。

 

●都市計画法、土地区画整理法に基づく制限

 市街化調整区域には原則として建物は建てられません。現在建物が建っていても建て替えができない場合があるので、「”区域区分”が”市街化調整区域”になっている場合は注意が必要」です。

 

●都市計画道路の有無

 1棟のアパートやマンションを購入する場合は特に注意が必要です。「計画道路がある場合は建築が制限されます」

 

●建築基準法に基づく制限

 商業地域、準住居地域などの用途地域、建ぺい率・容積率や防火地域、準防火地域、景観地区などは、建物を建てるときの成約になる事項を確認しておく必要があります。

 

●既存不適格建築物

 既存不適格建築物というのは、古いアパートやマンションで今の建築基準法や都市計画法では違法となってしまう建物ののことです。建て替えの場合は今の法律の適用を受けるので、同じ大きさの建物を建てられなくなってしまうので要チェックです。

 

敷地と道路との関係・私道負担の有無

 ここには「道路の種類、幅員、接道幅」などが記載されています。

 

●敷地と道路との関係

 たとえば下図のように表記されていたとします。どう読み取るかというと、「この不動産物件は、北側と東側の公道、南側の私道の3つの道路に面していて、南側の幅員(道路の幅)が3.5mしかないので、建替時にはセットバックが必要になる」となります。

 

■敷地と道路との関係

(650×)敷地と道路との関係

 

 道路の幅員は4m以上なくてはならず、南側の道路のように幅員が3.5mしかない場合は、建て替えの時に道路の中心線から2mになるようにセットバックしなくてはならないので、現状の建物の大きさが再現できない場合もあります。

 セットバックの面積の計算の仕方は、次のようになります。

 

(4m-3.5m)÷2×15m=3.75㎡

 

 次回建て替える時には3.75㎡のセットバックが必要となり、この部分は建物の敷地面積として算入することができません。

 

●私道負担の有無

 私道負担というのは、個人の私有地でありながら、道路として提供する必要がある土地のことです。私道負担の有無および免責、負担金額などが記載されています。

 私道は単独で所有している場合だけではなく、分割して所有している場合、共有している場合などがあり、権利関係が複雑です。

 そのため発生する負担も、維持管理のための負担金が必要な場合、ガス管や水道管の整備や修理のために道路を掘削する際に所有者の承諾が必要な場合、通行料の負担が必要な場合など、物件によりさまざまなのでよく確認しておきましょう。

 

●道路と通路

 「道路は魔物」と不動産業界の人たちは言います。道路はプロでも難しいということです。

 一見道路のように見えても、実は「道路ではなくて通路だった」ということもままあります。道路だと思って購入したのに、いざ建て替えをしようとしたときに、実は通路だったために、道路に面していない土地とされ、建て替えができないということはよくあります。

 道路の種類は下記の通りです。しっかり覚えておきましょう。

 

■建築基準法第42条に規定されている道路

(650×)建築基準法第42条に規定されている道路

 

●道路の種類(建築基準法による道路)

 「建物を建てることができる敷地が備えるべき前面の道路の条件は、建築基準法第42条に規定さrているもののみ」です。一見道路のように見えるものでも、上図の建築基準法第42条に規定されている道路でない場合には、建物は建てられません。

 

飲料水・ガス・電気の供給施設および排水施設の整備状況

 これらのインフラは生活に不可欠なものなので、その整備状況を重要事項説明書を読んで確認しておきます。また負担金などが発生することもあるので、あわせて確認しておきます。

 

■重要事項説明書に記載されているインフラの整備状況

(650×)重要事項説明書に記載されているインフラの整備状況

 

1棟の建物またはその敷地の管理・使用に関する事項(区分所有マンションの場合)

●管理費のが「滞納」されている場合

 購入物件の管理費が滞納されていないかチェックします。滞納している場合は契約までに解消するようお願いしましょう。

 

●計画修繕積立金に関する事項

 ここではすでに積み立てられている金額をチェックしてください。「修繕履歴と照らし合わせて、修繕が行われていないのに積み立てられている金額があまりにも低い場合は要注意」です。

 

代金、交換差金以外に売主、買主で授受される金銭

 ここには、次の5つの明細が載っています。

 

①手付金の額

②固定資産税などの清算金

③管理費・修繕積立金などの清算金

④賃料清算金

⑤敷金

 

 固定資産税、都市計画税、管理費、修繕積立金などを売主がすでに支払っている場合には、日割り計算で売主に支払うのが原則です。また入居者がいる不動産物件の場合は、買主が入居者(賃借人)に敷金を返還する義務を負う事になるので、敷金の金額を売買代金から引くのが原則です。

 

■契約金に”加算されるお金”と契約金から”差し引くお金”

・固定資産税などの清算金・・・加算されるお金

・管理費、修繕積立金等の清算金・・・加算されるお金

・手付金・・・差し引くお金

・賃料清算金・・・差し引くお金

・敷金・・・差し引くお金

 

契約の解除に関する事項

 不動産売買契約書と重なる部分がありますが簡単に説明します。

 

●”手付契約”をしている場合の解除

 売主も買主も、相手方が履行に着手するまでは(例えば代金の支払い、物件の引き渡しなど)売買契約を解除することができます。解除するには、「売主であれば、買主に対して受け取り済みの手付金の倍額を支払う」「買主であれば、売主に対して支払い済みの手付金を放棄する」ことが必要です。

 

●引渡し前に不動産物件が”滅失”してしまった場合

 不動産の取引では、契約締結と不動産物件引き渡しが同時に行われることはほとんどなく、契約締結から引き渡しまでに数週間から数ヶ月かかるのが普通です。したがって、その間に不動産物件が家事や地震などにより滅失する可能性もないとはいえません。

 対象不動産の引き渡し前に天災地変、そのほか売主の責任ではない理由により、対象不動産が滅失した時であっても、民法上、買主は売買代金を支払わなければなりません。そのため、このようなときには契約の解除を認めるといった特約がなされることが多いです。

 ただし、契約金額が200万~300万円くらいのものだと、契約締結、代金決済、不動産物件の引き渡しが同時に行われる場合もあります。

 

●”契約違反”による解除の場合

 こちらがきちんと義務を果たしているにもかかわらず、売主が不動産物件の引き渡しや抵当権の抹消・所有権移転登記への協力など、やるべき基本的な義務について行わないといった契約違反があったときは、通常3ヵ月程度の期間を定めて売主に義務を果たすように内容証明を送り、その期間が経過したら契約を解除できます。

 不動産売買契約では、損害賠償の予定額(違約金の額)をあらかじめ定めておくのが一般的です。違約金は売買代金の20%程度の契約が多いです。

 

●”融資利用の特約”による解除の場合

 売買契約締結後に、予定していたとおりの融資の承認が得られない場合、買主は売買代金の支払いができなくなります。

 その結果、買主は債務不履行(契約違反)の責任を負う事になりますが、それではあまりにも買主が不利なので、不動産売買契約において、「万一買主が融資を得られなかったときには売買契約を解除することができる」「売買契約が解除された場合、売主は買主に受領済みの金銭(手付金も含む)を無利息で速やかに変換しなければならない」といった規定を設けて買主を保護するようにしています。

 その代わり、買主に対して「契約締結後速やかに申し込み手続きをすること」「融資条件などを明確にすること」「融資利用の特約の期限」を義務づけています。

 

契約までにチェックしておくべき書類③:管理規約・使用細則

 「”管理規約””使用細則”は、入居者同士がマンションで快適に生活できるように定めたルール」です。

 

「管理規約」とは?

 管理規約は、マンションの管理・使用について区分所有者相互間で取り決めた規則のことをいいます。ここでは共用部分の範囲や共有部分割合、専有部分の範囲、使用細則、管理・管理組合・集会・理事会・会計などに関する事項が定められています。

 区分所有者相互の取り決めて成り立っているので、実情に応じて、話し合いの上変更することもできます。「ペットの飼育は禁止」「事務所としての利用は禁止」といった個別のルールもここで定められています。

 

「使用細則」とは?

 使用細則は共同生活を円滑に行うために定められた規則のことをいいます。管理規約より詳細に規定したものです。たとえば、「ペットの種類」「楽器の演奏時間の制限」といったことは使用細則に記載されています。

 なお管理規約の改廃は、特別決議(区分所有者および議決権の各4分の3以上)で決議されますが、使用細則は普通決議(各過半数)で決議されます。

 

契約までにチェックしておくべき書類④:登記簿謄本(全部事項証明書)

 不動産売買契約の前に、絶対にチェックしなくてはいけないのが、実は「登記簿謄本」です。「登記簿謄本は、いわば不動産の履歴書」です。登記簿謄本を見ると、次の重要な2つのことがわかります。

 

①所有者は誰か?

②その不動産に担保はついているか?

 

 登記簿謄本は表題部、甲部、乙区に分かれています。区分所有マンションの場合、表題部には「不動産の所在」「建物の番号」「構造」「床面積」とともに「敷地権の目的たる土地の表示」が書かれています。

 

■区分所有マンションの全部事項証明書のサンプル

(650×)区分所有マンションの全部事項証明書のサンプル

 

●甲区

 甲区にはその不動産の「所有権」に関する事項が記載されています。記載されている事項は、「順位番号」「登記の目的」「受付年月日・受付番号」「権利者その他の事項」になります。特にここでは「不動産の所有者が誰であるか」しっかり確認しておきましょう。

 

●乙区

 乙区にはその不動産の所有権以外の権利に関する事項が記載されています。

 「抵当権」が最も一般的ですが、質権などほかの「担保権がついていることもあります。なおインターネットで取り寄せた全部事項証明書の場合、所有権以外の権利が登記されていなければ「乙区」欄そのものがありません。

 担保権は、債務(不動産のローン)が返済できなかった場合に、お金を貸した金融機関などの債権者がその不動産を売却してその代金から返済を受けることのできる権利です。

 登記簿謄本は仲介する不動産業者からもらえますが、自分でも取り寄せてチェックしたい場合には、インターネットで閲覧することができます(有料)。

 一般財団法人 民亊法務協会 「登記簿情報提供サービス」(http://www1.touki.or.jp/)

 

■”家賃の値下げ”は隠さない!

 東京郊外でアパートを3棟の経営をしているAさん。古いアパートの2DKが2部屋、半年以上空いたままでした。管理会社から「賃料を値下げして募集したい」と提案を受けたので、3,000円値下げすることを了承しました。

 ところが、同じアパートに住んでいるほかの部屋の入居者がインターネットで情報を見て、「同じ家賃にして欲しい」と管理会社を通じて言ってきたため、しかたなくほかの部屋も値下げに応じてしまいました。

 今はインターネットで情報が入るため、賃料を値下げしたのを隠して募集するのは難しい時代です。賃料を下げて募集した時点で、現在の入居者にわかってしまうということを覚悟しなければなりません。

 反対にある大家さんは、長年住んでくれた入居者に対して、更新の際には更新料はもらわずに、何と国内旅行のチケットをプレゼントしています。賃貸業もサービス業であることに変わりありません。入居者に対する接し方が明暗を分けるという事例です。

 

■”自分がコントロールできる地域”に物件を持つ事がポイント!

 東京に住んでいて、地方のアパートを管理するのも大変です。Bさんは会社員だったころ北陸方面に転勤することになりました。おそらくここで一生暮らすことになるのだろうと思い、土地を購入しアパートを建てることにしました。

 ところがその後東京に戻ってくることになり、入居者募集や清掃、賃料徴収などの管理は地元の不動産会社に任せ、アパートの建っている場所には10年以上訪れていませんでした。

 最初の10年間、4部屋あるアパートは満室、もしくは空室になってもすぐに埋まり全く問題なかったのですが、10年を超えたころから空室が出ても埋まらない状況が続くようになりました。

 

 実は近くにあったある大手会社の工場が撤退してしまったのです。今まではその会社の従業員が借りてくれていたので問題がなかったのですが、撤退してからは大変です。ここ3年以上、4戸のうち2戸が空室で家賃を下げても決まらない状況です。

 そこでBさんは10年振りにアパートを見に行きました。現地に行ってびっくり!アパートの周りは草がぼうぼう、掃除もされておらず、階段の手すりはさびが目立つ状態でした。また、空室の部屋に入ってみるとほこりだらけ、虫の死がいが転がっているなどひどい有様でした。

 これでは賃料を下げても決まるはずがないと思ったBさんは、自分で掃除をし管理会社にも頻繁に連絡するようになりました。しかし今でもなお空室は埋まっていません。この例から解る様に自分がコントロールできる地域の範囲内に物件を持つことが大切です。

 

 

売買契約の締結

売買契約後でも”契約解除できる条件”を把握しておく

 ここまで来たら、いよいよ売買契約を締結します。まずは宅地建物取引士から重要事項の説明を受け、その後売買契約の締結となります。いったん契約を締結すると、簡単に解除することはできないので、前項で説明した手順にしたがって事前に契約内容を確認することが重要です。

 もちろん不動産会社にも説明義務はありますが、あくまでも「契約は自己責任」であることを肝に銘じてください。

 ただし契約後であっても、次のような場合には契約を解除することができます。この内容は一般的なものであり、個々の契約で解除に関する取り扱いは異なるので注意が必要です。

 

「クーリングオフ」による解除の場合

 売主が不動産会社(宅地建物取引業者)の場合、一定条件を満たせば、無条件で契約を解除することができます。一定の条件は次のとおりです。

 

①買主が購入の申し込みや契約の締結を、不動産会社(宅地建物取引業者)の事務所や不動産会社の本支店、モデルルームなど以外で行っていること

②不動産会社(宅地建物取引業者)が買主に、クーリングオフの適用があること、およびクーリングオフを行うための方法を「書面」で告げた日から8日以内であること

③物件の引き渡し前であることまたは代金の全額を支払っていないこと

 

「手付」による解除の場合

 相手方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付金を放棄して、売主は手付金の倍額を返還して契約を解除することができます。

 

「瑕疵担保責任」に基づく解除の場合

 物件に隠れた瑕疵(欠陥など)があった場合、買主は契約の目的を達成することができないときには契約を解除することができます。

 

「特約」による解除の場合(ローン特約など)

 特約の内容に応じて解除することができます。たとえば「ローン特約」の場合、ローンが受けられなかった場合、買主は無条件で契約を解除することができます。

 

「合意」による解除の場合

 当事者の合意に基づく条件で契約を解除することができます。

 

「契約時」に必要なものとは?

 不動産売買契約書に署名・押印したあと、手付金を支払います。支払方法は、現金、指定口座への振り込み、預金小切手で用意するといった方法があります。契約金額が小さい場合は、手付金なしで一括で売買代金の授受が行われる場合もあります。

 契約時に本人確認書類(免許証など)の掲示や、職業、取引目的(自宅用、投資用など不動産を購入する目的)などの申告を求められることがあります。

 「犯罪による収益の移転防止に関する法律」が適用される特定事業者は、マネー・ロンダリング対策のため、顧客の本人特定事項、職業、取引目的などについて、確認する義務を負っているからです。

 

契約当日は”印鑑”を忘れないように!

 印鑑や本人確認書類を忘れると契約ができないので、当日は忘れ物がないように注意しましょう。

 「当日は忘れ物がないように」と、仲介不動産会社が何度もその日に必要な書類、印鑑をメールや電話で伝えてくれますが、緊張してしまうからでしょうか、なぜか売主、買主、そして仲介不動産会社まで、何かしら忘れ物をしてしまうことがあります。

 何といっても「1番多い忘れ物は印鑑」です。認印で大丈夫なときは近くの文房具店で購入できるのでそれほど問題になりませんが、実印や本人確認書類を忘れると契約が延期になる場合もあるので、注意が必要です。

 できれば契約は午前中にしましょう。もし忘れ物をしてしまいいったん取りに戻らなくてはいけない場合でも、午後には再度契約することができます。

 

■契約時に必要な主なもの

(650×)契約時に必要な主なもの

 

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[最終更新日]2016/7/4