FinTech(フィンテック)が劇的に変える未来~テクノロジーがもたらす金融業界の構造変化とは?~




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FinTech(フィンテック)が劇的に変える未来~テクノロジーがもたらす金融業界の構造変化とは?~

 FinTech(フィンテック)の流れは既存の金融機関にとって、既存のビジネスを失う可能性がある一方で、大きなビジネスチャンスでもあるという、かじ取りが難しいものとなっています。

 

「シリコンバレーがやってくる(Silicon Valley is coming)」

 

 2015年4月に発表された、全米最大級の銀行であるJPモルガンのジェームズ・ダイモンCEOによる株主向けレターのこの一節は、金融界内外において大きな波紋を呼びました。

 ダイモンCEOは名うての銀行家としても有名ですが、この一説の中で、「多くのスタートアップが脳みそと資金力を動員して、銀行の顧客が苦痛に思っているポイントを解消し始めている」「JPモルガンも自らのサービスを洗練させ、彼らと戦争できる水準を維持しつつ、彼らとパートナーシップを組むことも良い選択肢と考えている」と述べています。

 

 

FinTech(フィンテック)は銀行にとっての”敵”か?”味方”か?

 よく、FinTech(フィンテック)は銀行にとって敵か、味方なのか、という議論が行われます。

 コンサルティング会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーの試算によれば、2025年までに、銀行における消費者向けローンの4割が、決済の領域では3割の収益が、FinTech(フィンテック)を活用する新たなプレーヤーによって失われるものとされています。

 これは、プレーヤーとしての代替のみならず、安価な選択しが出てくることによる、価格低下圧力も含めた分析の結果です。

 

 では、FinTech(フィンテック)のもたらすインパクトに対して、既存の金融機関はどのように対応していくのでしょうか。新規の参入者に対して、既存のプレーヤーがコストをかけて押さえこみを行うようなケースは、ビジネスの世界では珍しいことではありません。

 しかし、ユーザーに支持される新しい技術やビジネスモデルがある場合には、そのような戦略を中期的に採り続けることはなかなか難しいものとなるでしょう。

 むしろ、既に構築している確固たるサービス基盤、顧客基盤を生かすためにも、新しいサービスやインフラ技術を早めに取り込んだ上で、さらにその先にあるビジネスモデルを構築し、新しいマーケットのシェアを押さえにいくことの方が、幾倍もの価値をもつ戦略といえるでしょう。

 

 別のコンサルティング会社であるアクセンチュアは、このような側面に対して金融機関は、①デジタルに破壊される(Digitally Disrupted)か、②デジタルな再構築(Digitally Reimagined)を遂げるしかない、と述べています。

 この再構築は、FinTech(フィンテック)によってもたらされる「アンバンドリング(分解)」と、その後に起こるであろう「リバンドリング(再編成)」と呼ばれるプロセスとなります。

 

 冒頭のJPモルガンは格好のリバンドリングのケースを提供しています。同社は2015年12月、融資審査モデルに強みを持ち、自ら貸し付けを行うプレーヤー、米OnDeck(オンデック)との戦略的提携を発表しています。

 この提携で、OnDeck(オンデック)は即時に融資審査を行うことができるモデルをJPモルガンに提供し、JPモルガンは自社のバランスシートによる貸し付けを行うこととなります。

 巨大銀行が有する集客力と資本力と、新興プレーヤーのもつ先進的な技術が融合し、新たなプラットフォームを構築するこのケースは、まさにリバンドリング(再編成)の好例ということがいえるでしょう。

 

 

金融機関がFinTech(フィンテック)を取り込んでいく為の取り組み~スペイン弟2位のBBVA(ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行)のケース~

 金融機関がFinTech(フィンテック)を取り込んでいく為の取り組みは、このような明確な事業シナジーが発生する前の段階からでも様々な形で実現されてきています。

 欧米における例としては、例えば、FinTech(フィンテック)ラボと呼ばれるような、共同で技術活用の可能性を追求するケースもあれば、法人化前のアイデアベースのチームを育成するアクセラレーターと呼ばれる短期プログラムを実施するケースもあります。

 さらに、ビジネスの形が見えている段階の企業に向けて、数億~数十億円という規模の投資を行うベンチャーキャピタルを運営する金融機関も多数ありますし、最終的に買収まで実施した事例も見られます。

 

 このような取り組みに際して、世界でもおそらく最も先駆的な取り組みを進めているのは、スペイン第2位であるBBVA(ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行)です。

 

■BBVA(ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行)・・・https://www.bbvacompass.com/

(650×)BBVA①

 

 同行は2014年2月に、米国で銀行アプリを運営するSimple(シンプル)を1.17億ドルにて買収したことで、一躍有名となりました。Simple(シンプル)は米国において、その美しいデザインと使い勝手から、新しいユーザーエクスペリエンス(UX)をもたらす銀行アプリとして、非常に高い評価を受けていました。

 BBVA(ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行)はそれまでも1億ドル規模のFinTech(フィンテック)ベンチャーキャピタルを設定するなど、積極的な動きを見せていましたが、これほどの大型買収を決めたことで、ほかの金融機関における取り組みの本格化にもつながるほどのニュースとなりました。

 そのほかにも、2015年11月には、英国でアプリのみで手続きが完了するモデルを目指すAtom(アトム)銀行に、6,800万ドルの出資を行っています。

 

 同行のフランシスコ・ゴンザレス会長兼CEO(chief executive officer)は、「BBVA(ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行)は将来ソフトウェア会社になるだろう(BBVA will be a software company in the future)」と発言するなど、そのスタンスを明確にしています。

 ここまでの割り切りは極端な例かもしれませんが、金融機関にとって、多くの示唆に富む戦略的な動きをみせているものといえます。

 2016年に入ってからは、招待制のテスト段階とはいえ、銀行機能の一部をAPI(Application Programming Interface)化するプラットフォームも開始しており、他行に比べても何周も早く、FinTech(フィンテック)を取り込んだ銀行の近未来像を描いています。

 

 このような先進的な事例を待たずとも、様々な金融機関が今、独自の取り組みを進めています。

 代表的な例としては、中期経営計画の中で支店を廃止しつつもテクノロジー投資は積極化させる方針を明確にしたドイツ銀行や、API(Application Programming Interface)実装を容易にする開発者向けインフラを2012年から提供しているフランスのクレディ・アグリコル銀行、4件のアクセラレータープログラムに潤沢な資金を投じている英バークレイズ銀行などがあります。

 既に大きな顧客網を有している銀行が、どうすれば5年後、10年後により高い顧客満足を与えられるか、今後産まれてくる新しい市場を押さえることができるのか、ということについて、これらの銀行では試行錯誤を繰り広げています。

 

 このように海外では、テクノロジーがもたらす金融業界の構造変化にいち早く対応し、時代の流れに遅れないように、リスクを取る事ができる様々な環境を用意しつつ、投資や提携を通じて自らの選択肢を広げていくといった取り組みが見られます。

 一方、日本国内の金融機関も、メガバンクや地方銀行が、2015年の後半ころからこのような動きを積極化させているなかで、どのような成果が生まれてくるかが今後注目されます。

 

 

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