ビットコインの価値が0(ゼロ)になるシナリオを考察【シナリオ8. マイニングの停止】

　ここでは、2025年3月23日時点でビットコインネットワークのマイニングが停止し、価値が0になる可能性があるシナリオ8「マイニングの停止」が起こる確率を0.1%以下と推定し、その具体的な根拠を詳細に解説します。シナリオ8は、マイニング報酬がコストをカバーできなくなり、マイナーが撤退し、新しいブロックが生成されなくなることでネットワークが停止し、結果としてビットコインの価値が0になる状況を指します。このシナリオが起こるためには、マイニング報酬（ブロック報酬と取引手数料）が総コスト（電力コスト、Hardwareコスト、メンテナンス費用など）を下回り、マイナーが継続的に運用できなくなる必要があります。

現在のマイニング状況

2025年3月23日時点でのビットコインマイニングの状況は以下の通りです：

・ブロック報酬：現在のブロック報酬は3.125 BTCであり、1日あたり約144ブロックが生成されるため、総ブロック報酬は1日あたり約450 BTCとなります。現在のビットコイン価格（約84,000ドル）を基にすると、1日あたりのブロック報酬の価値は約3780万ドル（約56億5,730円）です。

・取引手数料：取引手数料はブロック報酬に加えてマイナーに支払われます。2025年3月のデータでは、月間の取引手数料は約1063万ドル（約15億9,089万円）であり、1日あたり約35万ドル（約5,238万円）となります。

・総収益：ブロック報酬と取引手数料を合わせた総収益は、1日あたり約3815万ドル（約57億961万円）、年間約139億ドル（約2兆802億9,333万円）となります。

　一方、コストについては以下のように推定されます：

・電力コスト：ビットコインネットワークの総電力消費量は約150 TWh/年と推定され、平均電力単価（5セント/kWh）を基にすると、総電力コストは年間約75億ドル（約1兆1,224億8,375万円）となります。

・その他のコスト：Hardwareの購入費用、メンテナンス費用、施設費用などを考慮すると、総コストは電力コストに加えて約25億ドル（約3,742億円）と推定されます。

・総コスト：電力コストとその他のコストを合わせると、年間約100億ドル（約1兆4,966億6,991万円）となります。

　これらの数字から、現在のマイニングは収益性が高い状態にあり、総収益（139億ドル）が総コスト（100億ドル）を上回っています。

将来的なリスクとトレンド

　シナリオ8が起こる可能性を評価するために、将来的なリスクとトレンドを考慮します：

・ハーフィングの影響：次のハーフィングは2028年に予定されており、ブロック報酬が1.5625 BTCに減少します。ただし、ビットコイン価格が歴史的にハーフィング後に上昇してきたことを考慮すると、マイニングの収益性は維持される可能性が高いです。例えば、2028年のビットコイン価格が20万ドルに上昇した場合、総ブロック報酬の価値は現在の水準を維持するか超える可能性があります。

・電力コストの上昇：電力コストが上昇した場合、マイニングの収益性が低下する可能性があります。しかし、マイナーは低コストの電力源（例：再生可能エネルギーや低価格の地域）へ移行することで対応できます。

・Hardwareの進化：マイニングHardwareの効率が向上することで、同じハッシュレートを維持しながら電力消費を削減できる可能性があります。これにより、コストを抑えることが可能です。

・取引手数料の増加：ビットコインの採用が拡大し、ネットワークの利用が増加すれば、取引手数料がブロック報酬を補完する重要な収益源となる可能性があります。

ネットワークの特性と調整メカニズム

　ビットコインネットワークには、マイニングの停止を防ぐための特性と調整メカニズムが存在します：

・難易度調整：マイニング難易度は2016ブロック（約2週間）ごとに調整され、ブロック生成時間が10分に保たれます。マイナーが減少した場合、難易度が低下し、残存マイナーがブロックを生成しやすくなります。これにより、ネットワークは一定の機能を維持します。

・分散型の特性：マイニングは分散型であり、特定の地域や組織に集中していません。したがって、一部のマイナーが撤退しても、他のマイナーがネットワークを維持できます。

　これらの特性により、マイニングが完全に停止する可能性は極めて低いです。

確率の定量化

　シナリオ8が起こる確率を定量化するため、以下の要素を考慮しました：